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オリンピックメダリストに共通する5つの特徴

スポーツ心理学の発達とオリンピックは非常に高い関係性があります。オリンピックは世界中のトップアスリートが何年もトレーニングを積んだ成果を一瞬で発揮しようとする舞台。その中で勝利する選手と敗れ去る選手の技術的な差はほんの僅かしかありません。むしろ、その技術的な差を生んでしまう心理的な側面の違いこそ、大きな違いを生んでいると言えるでしょう。

 USオリンピックコミッティの心理コンサルタントでもあるグールド博士はオリンピックでメダルを取った選手と取れなかった選手を比較して、勝利する選手に共通する特徴をリサーチで明らかにしています。

①本番にパフォーマンスのピークを合わせることができる 『ピーキング』

 オリンピック選手はもともと練習に対しての強いコミットメントや熱心さを持っています。しかし、本番で失敗した多くの選手は試合が近づき不安になってくると共通した考えが浮かんできます。「ハードワークが勝利につながる」と考えることにより不安を消そうとしてしまうのです。その結果、オーバートレーニングとなり、怪我をしてしまったり、チームの連携が崩れてしまったり、いつものパフォーマンスが発揮できない事態を引き起こします。メダリストやメダリストをサポートする優れたコーチはそのようなメンタルを理解していて練習を本番に向けてオーガナイズするとともに、不安や感情の高まりによるストレスをしっかりとコントロールしています。

②現実をしっかりと捉えたうえでの 『楽観主義』

 楽観主義がチャンピオンには備わっているとよく言われますが、メダリストの楽観主義は世の中で言われている楽観主義ほど単純なものではありません。メダリストとなる選手の多くは、実際はまるで悲観主義者のように目の前の状況を現実的に捉えることができます。彼らはその現実をしっかりと受け止めた上で、現状をさらによくしていけるはずだと楽観的に考えることができ、それをモチベーションに繋げているのです。たとえその努力が最後は失敗に終わろうとも悲観主義者と違い、その中でも次に向かって能動的に問題に対する解決策を探し続けています。

③『内発的モチベーション』 に焦点を当てる

 モチベーションの素は2種類あります。ひとつは金銭的報酬、周囲からの賞賛、メダルなどで、これは外発的な報酬です。オリンピックではこのような外発的報酬が極めてリアルで大きく、選手のメンタルをかき乱す要因となってしまいます。オリンピック本番で実力を発揮できず敗れてしまう選手は外発的な報酬に強いモチベーションを抱き、それに影響を受けやすい傾向にあります。一方メダリストたちは内発的報酬により意欲を掻き立てています。リオオリンピック体操金メダリストの内村航平選手は「メダルの数や色は気にしていません。それより、演技の内容を重視して、見ている人にいかに影響を与えるかを考えています。あとは、自分が体操を通じて何を伝えたいか、体操でどのように周りに影響を与えていくかということだと思っています。それは結果以上に価値のあること。それくらい、結果にはこだわらずにやっています」と発言しています。自分でコントロールできることに焦点を当て、モチベーションを掻き立てていることがわかるでしょう。

④完璧でなくとも勝つ 『完璧主義』

 オリンピック選手たちは競技のレベルを向上させるために多かれ少なかれ完璧主義的な要素を持ち合わせています。ところがメダリストの持ち合わせる完璧主義はそうでない選手の完璧主義とは少々違いがあります。メダリストは、完璧を目指しながらもそうはならないことがあることも視野に入れ、完璧に出来なかった時でもベストを尽くすための方法を何度も訓練しています。メダリストの持つこうした瞬時の適応力を身に着けていない選手の場合、完璧を目指しながらそれができないと、できないこと自体が大きなストレスになり、過去に失敗したことを思い出してそれを繰り返してしまったり、これからの試合に対して不安を抱いたりしてしまいます。その結果、自分がコントロールできることや、今すべきことへの意識が薄れてしまうのです。メダリストたちはそうではありません。彼らはどんな状況になっても自分のコントロールできること、今すべきことにフォーカスすることができます。それが結果の違いを生んでいるのです。

⑤心も体も自然に動く『オートマチズム』

 メダリストの多くは勝利へ向かう戦いの最中にまるで飛行機のパイロットが自動操縦に切り替えたように“オートマチック”状態だったと話しています。単に動作にとどまらず、感情や考え方も自動的にコントロールできている状態を作り出しているのです。彼らは、まったく同じ場面が以前にあったわけではないのに同じような経験を以前しているように感じています。メダリストたちは準備の段階で本番での試合を鮮明にイメージし、そのタイミング、手順などを作り上げていきます。それにより、本番でどうしていいかわからないカオスの状況を無くし、ネガティブな感情をコントロールできるようにしています。

 ここに示したオリンピックで成功につながる5つの特徴はアスリートだけではないのかもしれません。ビジネスや受験などの教育分野でも何かを達成する際には同じような要素が求められるでしょう。組織のリーダーやスポーツのコーチもしくは教育の現場でも、これらの5つ要素をそれぞれのフィールドでの活動を通じて伝え育てていけるのではないでしょうか。

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